昨夜は、そうだ。
現地のR大学とのディベートの後に、教授に連れられてみんなで夕食をしにいった。
分厚いのにやわらかい、絶品ステーキで有名なダイニングレストランだった。
脂がのっているのにすっきりしたステーキの味わい。それと、重厚な木のテーブルを囲む、和気あいあいとしたみんなの表情が思い出せる。
その中で、いつものように調子に乗って軽口を叩いている僕も、しっかりと覚えている。特段、なんにも不穏なことは起こらなかったはずだ。
その後は、そうだ、有志だけでどこかの店に2次会に行った。
どんな店だったか、思い出せない。畳があったような気もするから、和造りの居酒屋だった気もする。
泡盛をたくさん飲んだことは、身体だけじゃなく記憶のイメージにもはっきりと残っている。
どんな雰囲気だったか・・・。
(俺は・・・しか売らない。だけどお前らは・・・)
二日酔いでズキズキと痛む頭のなかで、誰かの声がこだまする。
これは、、、、僕の声だ。
随分と興奮した声だ。なんて言っているのか。
僕はまぶたを閉じで、まっくらな頭の中に反響する怒鳴り声に、耳を傾けた。
すると。
「俺はスキルしか売らない。だけどお前らは、忠誠心を売って金をもらうんだ!」
真っ暗だった頭の中にぱっと電灯がつき、昨夜の居酒屋での、あのギスギスした時間が映し出された。
(続く)