忍者ブログ

東京生まれ, ラップトップ育ち

あるラッパーの、システムエンジニア・ブログ

責任(後編[4])

×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

コメント

ただいまコメントを受けつけておりません。

責任(後編[4])

ベッドに入っている間だけ、僕は悪夢を見ずにすんだ。
そんなK事業部時代、僕の暗鬱たる毎日にはなにかが欠落していた。

ある夜、僕はその答えに気がついてしまった。
僕の毎日に足りていないもの、それはクリエイティビティだった。

与えられた業務を淡々とこなすだけのほうが楽だし好きだという人は多い。一つの生き方としてそれを否定することは出来ないが、すくなくとも僕はそうじゃなかった。

日々の創意工夫をこらして、自分の能力を存分に活用できる仕事。僕は、そんな仕事が好きだった。
効率的を越えて、効果的に仕事をすることの楽しさを求めていたのだ。
S事業部では、少なからずそういう仕事を任せてもらえていた。

広いオフィスを端から端まで探っても、K事業部にはそういうクリエイティブな仕事がない。僕は自身の胸の内で、そう固く結論づけた。

いつか自分がなりたい背中が、この事業部にはなかった。
そうして僕の瞳には、ある決意が宿るようになった。

小路の梅の匂いが鼻をくすぐる、うららかな小春日和に。

僕は課長のだらしなく丸まった猫背を呼び止めて、そのまま辞表をつきつけた。
要約するならば、「自分の評価が下がるから思いとどまってくれ」、と涙目で訴えるその中年のしまりのない顔を見て、25歳の僕はひどく滑稽で哀れだなと思ったような気がする。

僕はそうして、どうしても入りたかったその会社を結局は自らの意志で飛び出した。
2002年の春だった。


(エピローグへ続く)
PR

コメント

ただいまコメントを受けつけておりません。

プロフィール

HN:
G☆40(ジー・フォーティ)
性別:
男性
職業:
システムエンジニア
自己紹介:
タイトにデバッギン、そんなエビデイ

P R