遠い昔の、あの沖縄の夜を思い出しながら。
僕はいま、三線の鳴り響く南国とはまったく無縁の、東京コンクリートジャングルにいる。
東京の暑さは、今年も例年と変わらず、全く異常だ。
そういえば一昨年、仕事でひさしぶりに沖縄に行った。
それが、実におよそ15年ぶりの沖縄だった。
あの夜から、もうすぐ20年が経つ。
「俺はスキルしか売らない。だけどお前らは、忠誠心を売って金をもらうんだ!」
自身の若き咆哮は、今もまだ脳裏でこだましている。
こうして20年経った今。僕はその叫び声の延長線にいて、ちゃんとスキルを売る仕事をできているだろうか。
そして本当に、忠誠心は売ってはならないものなのだろうか。
そんなことを考えていた。
プラムザという会社で管理職の番台に上がりながら、現場のエンジニアを見ていてふと思う。
スキルがあるというだけで、それを一方的に売ることなんて、できやしない。
忠誠心という言葉には語弊はあるけど、誰かの役に立ちたい、いうなれば「誠意」があるからこそ、そのスキルに買い手がつくんじゃないか。
僕は今、プラムザのエンジニアのひとりひとりから、そのことを教えてもらっている気がする。
あのあとM弓は商社マンと付き合いだした。
そのままその彼と結婚して、3人の子供の母親になったそうだ。
M弓に、暑中見舞いでも出そうかな。
そう思って思いとどまり、かわりにこの駄文を書いてみた。
-了-